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⑤これまでの人脈を生かす

異業種にいくからこそ、今までの人脈が生きます。これは、ここまでの4つとは、少し趣が異なります。異業種転職に効く人脈とは、行き先の同業種人脈(それもあったに越したことはありませんが)ではなく、現職を含む、転職先企業にとっての「異業種」人脈です。

キャリアを経るにつれ、あなたを底上げしていってくれるのは、幅広いネットワーク、バラエティーに富んだ人脈の厚みです。人脈のダイバーシティ(多様性)が、思わぬところであなたを助けてくれるのです。

新たな販路を開拓したい。これまでのやり方とは異なる新たな手法や支援先を見つけたい。あるいは新たな転職先を見つけたい。こうした「飛び地」探しをするときに、助けになるのが、「さほど強くない人脈、知人」です。これは、この連載でも過去に触れたことがある「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」理論により実証されています。あらためて説明しますと、同理論は、価値ある情報の伝達やイノベーションの伝播においては、家族や親友、同じ職場の仲間のような強いネットワーク(強い紐帯)よりも、「ちょっとした知り合い」や「知人の知人」のような弱いネットワーク(弱い紐帯)が重要であるという、米国の社会学者マーク・グラノヴェッターが提唱した社会ネットワーク理論です。

転職にあたってやらなければならないことは、いまの会社での人脈を大切にすることです。関係性をこじらせて辞めてしまう人もいらっしゃいますが、絶対に損です。現職、あるいはこれまでの会社・職場での人間関係は、異業種に移籍するあなたの今後においては、何かのときにあなたを助ける貴重な人脈資産なのです。この観点をぜひ認識の上、立つ鳥跡を濁さずで退職を進めてください。

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異業種チャレンジは、自身の可能性を広げるチャンスとしても、非常に良い選択となりえます。ただし、それは異業種でも活躍できる前提となる経験要素を持っていてこそ。採用する企業側も、当然こうした部分のマッチ度を確認するでしょう。

異業種転職成功のためにも、ぜひしっかり5つのポイントを棚卸し・確認いただき、1つでも多くのポイントに接合しうる転職候補企業を吟味の上で選考に臨んでください。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

井上和幸
経営者JP 代表取締役社長・CEO。1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。https://www.keieisha.jp/ 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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