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「人への投資」を掲げる岸田政権は、リスキリングを後押しするための企業向け補助金や助成金を充実させている。企業がこれらの支援を活用することで、自社の従業員のリスキリングを進めやすくなったり、受講者に講座を提供しやすくなったりする。政府や自治体が現在実施している、企業向けリスキリング補助金・助成金制度の概要をまとめて紹介する。

<この記事の内容>
・リスキリングの補助金・助成金とは
・社員のリスキリングを進める企業への助成
・リスキリング講座を提供する企業への助成
・自治体が提供するリスキリング補助金・助成金

リスキリングの補助金・助成金とは

政府は、労働者がリスキリングによりデジタルや成長分野に関する知識・スキルを習得することで、賃上げや経済成長をめざす――という好循環をめざし、リスキリングに関する補助金や助成金を充実させている。

そのため、ここ最近では新規のリスキリング助成事業の開始や、既存の助成金の金額引き上げ、対象の拡充などが相次ぎ、個人・企業ともに恩恵を受けやすくなっている。

個人向けリスキリング支援の代表的なものには教育訓練給付金があるが、本稿では企業向けの支援について、従業員向けのリスキリングを実施する企業向けのものと、リスキリング講座を提供する企業向けのものに分けて解説する。

さらに、自治体でも企業向けリスキリング支援は充実している。東京都など自治体が実施している支援についても紹介する。

社員のリスキリングを進める企業への助成

人材開発支援助成金(厚生労働省)

事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した知識やスキルを習得させるための職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度。7つのコースから、主なものを紹介する。

人材育成支援コース

従業員に対して、職務に関連した知識・スキルを身につけさせるための訓練や、非正規雇用労働者が正社員になるための訓練を実施した場合が対象となる。助成額は企業の規模などによっても異なるが、1人1時間あたり760円の賃金助成や、45%〜100%の訓練経費の助成などがある。

教育訓練休暇等付与コース

有給の教育訓練休暇制度を導入し、実際に従業員がその休暇を利用して、自社以外が実施する研修や各種検定を受けた場合が対象となる。教育訓練休暇制度の導入に対して、30万円が支給される。

人への投資促進コース

事業者が労働者に対してデジタル分野や成長分野などの訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成の対象となる。

デジタルや成長分野の訓練では最大75%の経費、1人1時間あたり賃金960円が助成される。このほか、IT分野未経験の労働者のための訓練や、サブスクリプション型研修を実施した場合も、企業規模などにより異なるが、60%ほどの経費の助成が受けられる。

事業展開等リスキリング支援コース

新規事業の立ち上げなどのために必要な知識やスキルを習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成の対象となる。助成額は企業の規模によっても異なるが、最大で訓練経費の75%、1人1時間あたり賃金960円が助成される。

特定求職者雇用開発助成金 成長分野等人材確保・育成コース(厚生労働省)

高齢者や障害者などの就職困難者を、ハローワークの紹介により雇い入れ、人材育成に取り組む事業者に、助成金を支給する。さらに、未経験の就職困難者に対し、人材開発支援助成金による人材育成、賃上げをした場合には、通常の特定求職者雇用開発助成金の1.5倍にあたる最大360万円の助成金を支給する。

助成メニュー(1)【成長分野】

高齢者や障害者などをハローワークの紹介により雇い入れて、プログラマーやシステムエンジニアといった仕事に従事させ、人材育成や職場定着に取り組む場合が対象となる。企業の規模や、雇用する労働者の障害の程度、労働時間にもよるが、最大で1人あたり3年間360万円の助成を受けられる。

助成メニュー(2)【人材育成】

未経験の高齢者や障害者をハローワークの紹介により雇い入れて、人材開発支援助成金を活用した人材育成を行い、賃上げを行った場合が対象。企業の規模や、雇用する労働者の障害の程度などにもよるが、最大で1人あたり3年間360万円の助成を受けられる。

リスキリング講座を提供する企業への助成

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)

リスキリングやキャリアアップを考えている個人が、事業者が実施するキャリア相談や転職相談・職業紹介を無料で受けられる事業。事業者はキャリア相談、リスキリング、転職支援といったサービスを提供するための経費の補助を受けることができる。

対象企業・訓練内容

補助を受けられるのは、キャリア相談、リスキリング、転職支援、フォローアップまでをすべて実施できる事業者。現在、ウェブデザインや動画制作、データ分析などのリスキリング講座を提供する企業が対象に選ばれている。

助成額

事業者に選ばれると、助成を受けた額以上に個人の負担が軽減されることを前提に、個人に対するリスキリング講座の価格の2分の1にあたる額(上限40万円)が助成される。さらに、講座を受けた個人がリスキリングを経て実際に転職し、その後1年間継続的に転職先に就業していることを確認できる場合は、追加的に講座価格の5分の1相当額(上限16万円)が助成される。そのほか、事業に関する人件費や、外注した広告費なども助成の対象となる。

公的職業訓練のデジタル分野の重点化によるデジタル推進人材の育成(厚生労働省)

対象企業・訓練内容

公共職業訓練や求職者支援訓練を実施する事業者に対して、デジタル分野の資格取得を目指す訓練コースの委託費などを通常の公共職業訓練よりも増額する。

対象経費・助成額

ITなどデジタル分野の資格取得などを目指す訓練コースにおいて、就職率などが一定割合以上の場合、委託費が1人あたり月1万円上乗せされる。就労に結びつく実践的な企業実習を組み込んだデジタル分野の訓練コースについて、委託費が1人あたり2万円上乗せされる。

デジタル分野のオンライン訓練では受講者にパソコンを貸すためにかかった経費を、1人あたり月1.5万円を上限として、委託費などの対象にできる。

自治体が提供するリスキリング補助金・助成金

ここまでは政府が実施する助成内容について解説した。以下では自治体が現在提供しているリスキリングに関する補助金・助成金について主なものを紹介する。

DXリスキリング助成金(東京都)

中小企業が従業員に対し、民間教育機関によるDX研修を実施する際の経費を助成する事業。従業員が受講する講座の受講料や教科書代などが対象経費となる。1社に1年度につき64万円を上限に、経費の3分の2が助成される。

オンラインスキルアップ助成金(東京都)

中小企業が従業員に対し、eラーニング研修を実施する際の経費を助成する事業。従業員が受講する講座の受講料などが対象経費となる。従業員などの規模により、1社につき20〜27万円を上限に、経費の2分の1〜3分の2が助成される。

中小企業デジタル人材リスキリング促進事業(金沢市)

中小企業の従業員が「ITパスポート試験」「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」を受験したり、対策講座を受講したりする場合、企業側が負担する受験料や受講料を助成する事業。

受験料や受講料の2分の1が助成される。なお、受験料の助成限度額は1人あたり3千円、受講料の助成限度額は1人あたり1万円(応用情報技術者試験は2万円)。

ITパスポート取得支援補助金(広島県)

企業の従業員がITパスポート試験を受験したり、対策講座を受講したりするための経費の一部を助成する事業。企業の規模によって違いはあるが、1人あたり受験料6800円、1人あたり講座受講料2万円といった上限で、関連経費の助成を受けることができる。

ライター 吉川真布(株式会社Linkard)

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