「優秀な人ほど転職する」は本当? 焦ると危険な理由
技術者の働き方ホントの話セレクション大企業というものは、1人では達成できない大きなテーマに、大人数が力を合わせて取り組んでいるわけです。1000人、1万人が集まって品質を高め、信用を生み出しているのです。「自分は大企業の看板に守られてぬくぬくと過ごしている」と引け目に感じている人もいますが、その必要はありません。むしろ、その看板(信用)を守り、アップデートしていくことは立派な仕事なのではないかと筆者は思います。
転職市場で「優秀」であれば幸せなのか
行動に移さないまでも、転職を匂わす発言をする同僚もいるでしょう。こうした発言を聞くたびに焦りを抱く人もいるかもしれませんが、これも気にする必要はありません。
筆者は、過去に10回の転職を経験しています。退職時に必ずといってよいほど「おまえを追って自分も転職する」と伝えにくる同僚が2~3人はいました。
しかしこのセリフをわざわざ言いにきた人ほど、20年、30年たった今でも退職せずに同じ会社に残っています。文句を言いながら働き続け、そろそろ役職定年を迎える年齢になっています。自分から転職を口にする人ほど、案外動かないものです。
また、転職市場でいわれる「優秀」であることが幸せにつながるかというと、そうとも思えません。筆者の知り合いにも、管理職にならず一般社員のままで定年を迎える人はたくさんいます。昇格試験で運悪く3回不合格、その後はなかなか受験要件が整わず管理職に縁がなくなったなどのケースです。
こうした人が不幸かというと、そうは見えません。定年を前に早くも穏やかな生活をしながら、そこそこの額の退職金や年金を手に入れようとしているのを見ると、これも幸せだと感じます。
転職市場で「優秀」でなくても、しっかりと収入を確保して家庭を安定的に維持するという意味で「優秀」であれば、人生は楽しいのではないでしょうか。
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。