隣の新人が優秀に見える…「OJTガチャ」悲劇防ぐには
技術者の働き方ホントの話セレクション同じ新人でも、トレーナーに手取り足取り教えてほしい人もいれば、自分で考えて行動したい人もいます。「適切な時間」がどれくらいかも人によって異なります。つまり、トレーナーとの相性によって感じ方が変わってくるわけです。
隣の芝生(新人)は優秀に見える
OJTトレーナーの視点でも考えてみましょう。OJTトレーナーによくあるのが、新人育成が思い通りに進まないとき、他のOJTペアがうらやましく見える現象です。まさに「隣の芝生は青く見える」のです。
「隣のチームの新人は元気に電話対応をしている」「何も指示をしなくても進んで仕事に取り組んでいる」といった様子が目につきます。そして自分が担当する新人に対して「どうしていちいち細かく指示をしなくてはならないのか」「あの新人だったらOJTもうまくいったはずだ」という思いが膨らんでいきます。
揚げ句の果てに、人事部門に「なぜこんな新人を採用したのか」と文句を言う人もいます。筆者も人事担当をしていたとき、実際にこうしたクレームを受けました。その部署の上長などに話を聞いてみると、新人に大きな問題があるのではなく、トレーナーと新人の相性が良くないケースが散見されました。
OJTは交代制に、3カ月単位でペアを変える
筆者がクライアント企業にアドバイスしているのは、「OJTのペアを交代制にする」方法です。
人間の相性はなかなか変えられません。もちろん時間をかけることで育つ新人もいますが、トレーナーとの相性が合わずいつまで待っても状況は変わらないこともあります。新人がどう育つかは短期で見極められるわけでもないので、思うような成果が出ない場合は「相性が合わなかったね」くらいのライトな感覚でどんどんペアを変えてみましょう。
例えば3カ月単位でペアを変えれば、OJTトレーナーは1年に4人の新人を指導できます。新人も、4人の先輩の仕事ぶりを間近で見られます。
相性が悪い、好きになれないといった言葉は、職場ではわがままと見なされることもあります。もちろんそのせいで仕事をしないというのは理由になりませんが、職場環境を整えるうえでとても重要な要素であることは間違いありません。
新人には、せっかくなら人間関係が良好な状態で仕事を始めてもらいたいものです。人間関係が原因で新人が会社を辞めてしまうことがあれば、本人も会社も大きなダメージを受けます。
OJTトレーナーにとっても、新人と向き合う経験はとても貴重です。自分の仕事をこなしながら、人に仕事を教えるという業務が加わるわけです。本人にとってなるべく都合の良い環境をつくることが大切でしょうし、相性が悪くても期限が見えていれば真剣に取り組めます。
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。