デキる人は「切り上げ上手」~会話の絶妙な終わらせ方

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仕事ができる人は、「切り上げ方」が上手です。相手の話に延々とつき合っていたら、時間はいくらあっても足りません。かといって、「次があるので失礼します」「アポイントに遅刻してしまうので」などと言えば、「私と話をしたくないのか?」「ずいぶん、ビジネスライクな人」と思われかねません。
こういう場面では、
「今回は課題として持ち帰らせていただき、次回じっくりお話ししたい」
「素晴らしいご提案をいただきましたので、社に持ち帰り上司とも協議します」
というようにまとめます。
話の腰を折らずに「次がある」ことを伝えれば、相手にストレスを与えず話を終えられます。
時には、課題や問題を解決するよりは、まず話を聞いてほしい、という願望が強い方もいらっしゃいます。
このような方には、話を聞く姿勢を見せた上で、
「あなたのお考えもわかります。だからこそ、妥協点をみつけませんか?」
「あなたのご心配は、もっともです。私もじっくり考えたいので、少し時間をいただけませんか?」
というように、相手目線で話を整理してから提案するとよいでしょう。
また、時間がないときに長くなりそうな話を切り出される時も、ありますね。
そこで、「忙しいから後にして」「あなたの話は長いから……」と突き放したり決め付けたりすれば、話を聞いてもらえないという印象を与えてしまいます。
こんなときは、
「今、5分くらいしかありませんが、よろしいですか?」
「まことに申し分けありませんが、5分ほどしか時間が取れませんが」
とタイムリミットを数字で示します。すると、相手も手短に話をまとめようとします。
それでも話し足りない様子が見受けられた場合には、
「あとで時間をとりますから、都合を教えてくださいませんか?」
「後日、お話を聞かせていただいてもよろしいですか?」
と気遣いを示すのも、相手の立場を尊重した「切り上げ方」です。
話を切り上げる「基本的な姿勢」

商談の後に雑談も必要ですが、長すぎるのも困りものですよね=PIXTA
話を切り上げる際は、
●自らそういった態度を示さない
●相手自身の意思で、話が終わるのを待つ
のが、基本姿勢です。
腕時計をちら見したり、そわそわしたり、咳払いをしたり、お出ししたコーヒーカップや茶碗を片付けるのは、「早く帰ってほしい」「終わりにしたい」という意図が透けてみえます。
相手の立場からみれば、それまで良好な関係を築いてきたとしても、「冷たいなあ」「余裕がない人だ」と、付き合い方を、改めようと考えるかもしれません。
こうしたあからさまな態度は、人間関係を悪化させる可能性が大。マナー違反といえるでしょう。
先約がある場合の切り上げ方
最初から約束があり、その時間が決まっている場合には、話を始める前に、
「午後1時から外せない会議が入っておりまして、その旨ご了承ください」
「遅くとも○時には、退席させていただきますので、ご理解くださいね」
などと、前もって相手に伝えておきましょう。
その上で時間が迫ってきたら、
「まことに申し訳ありあせんが、そろそろ失礼させていただきます」
「恐れ入りますが、決められなかった案件については、考えをまとめ○日までに対応させていただきたいと思いますが……」
と切り出します。そうすれば、話の腰を折られるという印象は抱きません。
また、忘れていけないのは、自分から訪問している場合は、相手に無駄な時間を過ごさせないように、用件が済んだらムダ話はしないで、すぐに退席すること。
商談がうまくいった場合や自分にとって好ましいニュースがあるときなど、長話したくなるのは人情ですが、「最高の結果を出す人」は、そうした振る舞いはしないものです。
切り上げた時に、「あなたと話ができてよかった」「有意義な時間を過ごせた」と、相手が思ってくれたらうれしいでしょう。
逆につまらなそうな表情を浮かべていたり、なごり惜しそうな態度が見え隠れしていたら困りますね。
できれば、切り上げたくないと思う向きがあるのも、事実です。しかし、相手に話を切り上げさせる合図を送るよりも、自分でうまく切り上げた方がきちんと会話を終えることができます。そこはおさえてくださいね。
さらに、「あなたとの話は楽しかった」という気持ちを表現するといいでしょう。たとえば、
「大変、勉強させていただきました」
「教えをいただきありがとうございます」
「○○様の豊かな知識に、感服しました」
と素直に思いを伝え、
「本当は、このままお聞きしたいのですが……」
「時間が止まってほしいです」
「また、すぐにでもお伺いしたいです」
などと言えば、退席するのが忍びないという思いは相手に十分伝わります。そうした気遣いをすれば、あなたから切り上げても問題は生じません。
終わり良ければすべてよし
「終わり良ければすべてよし」とは、本当によく言ったものです。何事も終わりがいいと、それだけで気持ちがよくなるのは、あなたにも経験があるでしょう。きれいな終わり方は、相手に好印象を残し、次に始まる新しい展開を予感させます。
明るい未来を、イメージするものです。会話も同じです。きれいに終われば、好感度が増し人間関係はより豊かになるでしょう。
一方、だらだら続くおしゃべりや切り上げ時がつかめない会話、長電話、なかなか本題に入らないメールや手紙では、ストレスが増すばかりです。
世の中、「ハッピーエンド」が一番です。たとえ、初対面の「ひとこと」でつまずいたとしても、終わりさえうまくいけばきちんと収まるものです。
ビジネス上の会話はもちろん、相手が友達や家族でも会話の「切り上げ方」に、少し気を配ってみると相手に良い印象を与えることができます。
これまで「仕事だからしかたがない」と、得意先のおしゃべりや自慢話、上司や同僚の不平不満や愚痴の類いに付き合ってきた方もいらっしゃるでしょう。どんな相手に対しても「聞く耳を持つ」「聞く姿勢」でいることは、人づきあいの基本ですが、限度があります。
切り上げ方がわからない、自分から切り上げたら不快に感じるのではないかと危惧してきた方も、これを参考に実践してみてくださいね。ストレスが軽減され、好感度も高まり、後くされもない。会話はより楽しいものになります。
[2016年8月2日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。