ブーム再来! あの剛腕秘書が語った素顔の田中角栄

出版界は「田中角栄関連本ブーム」に沸いている。石原慎太郎さんが田中角栄を主人公に書いた小説「天才」(幻冬舎)だけでなく、気鋭の作家たちの単行本がずらり並んでいる。「田中角栄ムック本」も、こんなにも……というぐらい。
元総理と"ゆかりの深い"文芸春秋は、本誌に加え「1000億円を動かした男、田中角栄全人像・日本にとって角栄とはなんだったのか」を8月臨時増刊号として出している。そして当然ながら、長年、角栄さんに寄り添ってきた剛腕秘書、早坂茂三さんの単行本や文庫化された著作が5冊ほど平積みになっている。
自身初の報道番組、コメンテーターは早坂茂三さん
「早坂さん。亡くなってもう12年か……」
「田中角栄」という人物について興味を持ったのは四半世紀前、番組をご一緒した早坂茂三さんのおかげだった。

第28回自民党大会であいさつする田中角栄
田中角栄(著名人だから呼び捨て)が総理になって「今太閤」と騒がれた1972年。意識低い系大学生だった私は、政治にはとんと縁がなかった。その後ひょんなことからラジオ局のアナウンサーになったが配属先はスポーツ。そのスポーツをしくじってクビになった後はもっぱら音楽畑と、相変わらず政治への関心は低いままだった。
そんな私が、何の因果か「報道番組」を任されることとなった。
プロデューサー:「その、無知という新鮮さが番組の武器! もう一つの武器は、各曜日を担当するレギュラーコメンテーター陣。ちなみに月曜日は、あの早坂茂三さん。週の初めは、インパクト重視でいく!」
田中角栄元総理の政策秘書を23年数カ月務め、政界の裏も表も知り尽くした"こわもて"。「よっ!」と笑顔で群衆に手を振る角栄さんの後ろで、周囲を眼光鋭くにらみつける早坂さんの姿が目に浮かび、前途多難な「予感」がした。
「話題物件の入居に議員秘書の口利きは効き目があるか」
記念すべき番組初回、1988年4月11日の朝が来た。
番組開始の3時間前にスタッフ総勢10人ほどが集まり「ネタだし」が始まる。この番組のコンセプトは、その日の朝刊各紙から「最もリスナーが知りたいのではないかと思われる話題」を各自が選び出し、「なぜこのネタで勝負したいのか?」をプレゼン。勝ち残ったものをテーマに、番組放送中にどんどん取材し、謎を解いていくという「ニュース探検番組」だった。
早い話が「行き当たりばったりスタイル」だ。
早坂さんを迎える初日。あまたあるニュースの中から「新宿百人町の団地。劇場(グローブ座)付き物件、入居開始」(梶原記憶?)という、いささかスケール感に欠ける記事が採用された背景には、当時の「住宅への関心度の高さ」があった。