「お客様は神様」の暴走 求められる「顧客の品格」

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10回にわたったこの連載も今回で最後です。最終回、私から社会に向けて「提言」をさせてください。それは駅のホームでよく耳にする「ただいまお客さまご案内中です」の「ご案内」をやめませんかという提言です。
「ご案内」とは、車いすの人が電車に乗るのを補助する行為です。車いすの方が乗り降りするとき、あらかじめ待ち構えた駅員がお手伝いしている光景をよく見かけます。私はそれを見ると、いつも思うのです。「どうして近くにいる人々が手助けしないのだろうか」と。お手伝いを駅員任せにせず、周りにいる人が助ければ済む話だと思うのです。ほとんどの人は暇そうにスマートフォンをいじっているのだから、車いすやベビーカーの乗り降りを手伝うぐらい、大した手間ではないでしょう。
これから先、オリンピックやパラリンピックで海外から日本を訪れる車いすの人が増えるのは間違いありません。ならばそろそろ私たちは「ご案内」を駅員任せにしないで、その場にいる人たちがみんなで助けるようにしませんか?
強くなりすぎた「お客様」の立場
べつに駅員さんの肩を持つわけではありませんが、彼らの仕事は大変です。電車がトラブルで遅れたといっては「駅員に詰め寄る」客がいます。私が知る限り、電車が遅れたときに「駅員に詰め寄る」という蛮行が許されるのは日本ぐらいです。他の国でそんなことをしようものなら「私の責任ではない」と駅員から逆ギレされることでしょう。
最近、あらゆる場所で客の立場が強すぎるように感じてなりません。「おもてなし」といえば聞こえがいいですが、最近売る側が客にへりくだりすぎ、相対的に客の立場が強くなりすぎた気がします。「俺は客だぞ」とばかりに店員をなじる「タチの悪い客」が増えています。
先日、知人の女性から「上司に幻滅した話」を聞きました。なんでもその男性上司は職場ではおとなしく、とくに「上に対しては絶対服従」なのだとか。その社内ではおとなしいはずの男性上司、会社の宴会で訪れた飲み屋にて態度が豹変(ひょうへん)したそうです。