社員は不満だらけ、大阪支社で苦闘
キリンビール社長 布施孝之氏
それでも色々やってみました。「自信と誇りを持って」「お客様との接点をできるだけ多く」。そんなメッセージを一生懸命、発信しました。
結果は失敗。キリンビール全体で見ると08年はかなり健闘した年で、トップだったアサヒビールをあと少しで追い落とすところまで追い詰めましたが、大阪支社は奮いませんでした。「これはダメだ」。一から出直すことにしました。年末の全体会議で支社のみんなに「申し訳ない。リーダーである私のミスだった」と頭を下げました。
「支社長がこんなに頭を下げるなんて」。みんな随分と驚きました。しかし、それで終わりではありません。「09年は絶対に勝とう」。こう訴えたのです。
そして09年。「これだ」というチャンスが到来しました。3月から「一番搾り」を麦100%に大リニューアルすることになったのです。ここで一点突破する戦略を打ち立てました。
もちろん支社内での抵抗は強かった。浪速の洗礼です。「分かってへん。大阪は『ラガー』が強いんや」。年かさの社員たちはこう言ってきます。しかし、私はひるまず、こう言いました。「いや、これまで『ラガー』でやって伸びなかった。『一番搾り』が生まれかわったことを大阪中の飲食店やお客さんに伝えてほしい。ワインなど他の成果指標はやらなくていい。本社から文句があっても自分が責任をとる」
[日経産業新聞2016年8月4日付]
※仕事人秘録セレクションは金曜更新です。次回は2017年7月28日の予定です。