男性学から読み解く女性活躍 真の改革、男女セットで
大正大学心理社会学部人間科学科准教授 田中俊之さん

共働き夫婦の育児は分担の決め方が悩ましい PIXTA
女性の活躍を考えるうえで、男性の働き方や生き方の変化は重要なテーマの一つだ。しかし、女性を取り巻く状況のみにスポットが当てられがちなのが現状だ。そこで「男性学」の研究者である大正大学心理社会学部人間科学科准教授の田中俊之さんに、男女それぞれの仕事、生き方はどう変わっていくべきか、男性学の視点で解説してもらった。
就活時に感じた違和感解き明かしたい
――まず、男性学を研究するようになったきっかけを教えてください。
大学4年生の就職活動期に感じた違和感がきっかけです。同級生がいざ就活となるとみんな同じ髪の色になり、同じスーツを着て「就職する」と同じことを言い出したときに、私はかなりびっくりしました。男性の場合、就職すれば定年まで約40年辞められません。20年そこそこしか生きていないのに、それを当たり前だと思い、決断する様子が非常に興味深かったのです。
ちょうど日本でも男性学の入門書が出て、大学のゼミで講義があったり、研究者も現れたりした時期でした。戦後の日本社会の中で男性が会社に雇われて定年まで働くということがいかに当たり前になっていったのか。それを女性の問題とセットで考え、「男は仕事、女は家庭」という役割分担のルールがいかに作られたのか、明らかにしていきたいと思い研究を続けています。
進む育休後の職場復帰 変化を理解し、対応急げ
――最近の働き方に関する環境の変化についてどうとらえていますか。
国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」に、第1子出産後の女性の就業経歴についてデータがあります。昭和の終わりごろの1985年から89年には、女性の73%、4人のうち3人は結婚、妊娠、出産のどれかで仕事を辞めています。「昭和の話」と思うかもしれませんが、90年代以降もそれほど変わりません。2000~04年は60%台後半、05~09年でも60%台半ばの人が辞めています。