不倫たたきが続く理由 とがめるトーンに変化?
友人A「かつて俳優の石田純一さんが『不倫は文化だ』と言い放ってマスコミからたたかれましたよね。『悪いことをしておいて、なんて言いざまだ? 奥さんの身にもなれ!』そういう声も強くありました」
梶原「あったあった。でも、俺なんか、怒りというより、うらやましかったなあ」
友人A「世間の受け止め方は今より多様だったと思うんです。多くがたたく側に回りましたが、一方で『俳優さんだもの、誘惑の一つや二つ、あるわよね』ぐらいに笑って済ます『寛容な人』がまだ何割かはいたような気がします。あの物言いの与える印象が良い悪いは別にして」
梶原「まあ、夫や父親としてのイメージは良くないわな」
友人A「賃金の伸び悩み、格差の広がり、承認されない不満・鬱屈、少子高齢化であすが見えない。そういった不安をため込んだ我々から寛容の精神が薄れ、『いい思いをするヤツは許せない』との感覚ばかりが強まっていったんじゃあないでしょうか」
梶原「なるほど! 『不倫』は字面通り『道に外れている』と皆が認める。ということは、これこそが、ストレス発散に便利な格好の標的?」
友人A「心置きなく皆でたたいてスッキリしたい。誰にも文句を言われない安全な場所から。そういう標的、獲物、言ってみれば『おいしい料理』を提供するのが?」
梶原「?」
友人A「週刊誌!これが第一報。週刊誌のスクープに続いて、我々が『許せない!』と怒ったり、いらだったりする気持ちを上手に受け止め、二次加工するのが?」
梶原「テレビ?」
友人A「商売上手なテレビは正義感まで商品化してくれちゃっているというわけ」
梶原「へええ」
友人A「あ、もうこんな時間だ。この辺でそろそろ」
梶原「きょうはたっぷり勉強させてもらったから、払いはこっちで」
友人A「そうですか? じゃ、お言葉に甘えて」
気がつけば、友人Aは飲み屋での『雑談の商品化』に成功していたのだった。
※「梶原しげるの『しゃべりテク』」は木曜更新です。
