「100人に1人」が喜ぶビールで絶好調・ヤッホー
ヤッホーブルーイングの井手直行社長

ヤッホーブルーイングの井手直行社長
官製値上げ、若者のアルコール離れなど一般的にビールは売れにくい。市場は逆風だが、個性が際立てば、売れることを証明しているのがヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)だ。井手直行社長は「ないものを創る企業文化は社員が1万人になっても変わらない。米グーグルにもなれる」と約140人のリーダーは明るい未来に酔いしれている。
――ヤッホー、人気ですね。ターゲット顧客はどう設定していますか。
「一番新しい『僕ビール、君ビール。』の場合、30歳前後の男性です。『水曜日のネコ』がやはりアラサーの女性で、責任ある仕事をこなす皆があこがれるようなビジネスウーマン。美食、ファッションにこだわり、住まいは東京・自由が丘や中目黒のイメージです」
消費者の好み分散、ビールにも波及
――市場調査はしないのですか。
「大手のような大がかりな調査はしないですね。というか、小さい会社だからできなかった。スタッフの友人や親会社の星野リゾートにいるオピニオンリーダー型の女性をつかまえ、深掘りしていきます」
――究極のビッグデータですね。
「(笑)。我々は潜在ニーズというか、100人に1人しか示さないニーズをくみ取るのがポリシーです。大手メーカーは昨年だと80種類くらいの新しいビール系飲料を出しましたが、1年後はほとんど残らない。何年かおきに出すヤッホーのビールは大手の新製品より売れているわけです」
――今の消費嗜好をどう見ていますか。
「ここ数年で好みが分散化し、ビールもようやくそんな状況になってきたと思います。大手の場合、多様化戦略を進めても中身の差はわずか。我々のビールはみんな味が違いますから」
――ビールの販売シェア、コンビニ向けが伸びていません。ヤッホーはいかがですか。
「うちはすごくいいです。チェーンで当社のビールを定番で置くのはローソンで、そこでは大手に近いシェアがあります。そもそも3年ほど前にローソンから『若者に刺さるビールを創れないか』との打診を受けたのがきっかけです。そこで誕生したのが『僕ビール…』ですが、ローソン側も『良さが分からない』とためらったのです」