相手の共感を呼ぶ言葉選び 体のパーツに絡める

提案に説得力を持たせるうえでも、共感を呼ぶ表現を選びたい =PIXTA
ミーティングや商談などで意見や感想を求められることがあります。こういう場合に気の利いたことを発言して存在感を示したいと思う人も多いでしょう。しかし、なかなか見つからず困ったという経験を持つ人も少なくなさそうです。私自身、内輪のミーティングならば気負うことなく発言ができますが、取引先を前にすると、「好感を持たれる話し方をしなくてはいけない」「分かりやすく発言しないといけない」などと、構えてしまいがちです。
売り上げ予測や予算、納期など数字が求められる質問が出れば、「はっきり答えるべきだが、うかつに返事をして実現できなければ、会社の信用にかかわる」というふうに考えて、発言が慎重になります。かといって「確かに、おっしゃるとおりです」「同感です」「そう思います」というように同調するばかりでは、自分の意見を持っていない、人の意見に左右される人と思われるだけでなく、真剣にその問題を考えているとは思えないと受け取られる心配もあります。
たとえ自分の考えが他の発言者と同じだとしても「同感です」「その通りです」と繰り返すのでは能がありません。他者とは違う言い回しや話し方は、ビジネスの場はもとよりプライベートでも欠かせません。そんなシチュエーションで私が活用しているのが「体のパーツ」を使った表現です。
体のパーツを表現に織り込む
たとえば、取引先と会食をしていて、「新商品の売り上げはどうですか?」と、質問されたとしましょう。毎回、「おかげさまで好調です」と返すのでは、会話がマンネリになります。かといって、「絶好調です」では、軽薄に見えるでしょう。「こんなに売れるとは思いませんでした」「運がよかっただけです」と正直な意見を述べたとしても、言葉通りに受け取る相手ばかりではありません。
謙遜も度が過ぎれば、失礼に聞こえます。誰の目からみても明らかに数字が上がっているのに「まったくだめです」「もっと売れるはずなのですが」では、「嫌みか?」「うそっぽい」と、謙虚を超えて不快感を抱かせてしまいかねません。
新商品の売り上げの感想ならば「ありがたいことに右肩上がりです」(右肩)、「おかげさまで、息つく暇もないほど売れています」(息=心臓)というように、体のパーツを使って表現すれば、単に「好調です」と言うよりも、具体的で相手の心に響きます。もちろん、勝ち誇ったような言い方はタブーです。あくまでも謙虚に伝えるよう、気配りしてくださいね。
何かとアドバイスをしてくださる人には「●●さんのお心遣いのおかげです」(心)、「●●さんが手助けしてくれたから成果が出せたのです」(手)など、体のパーツを加えた表現をすると、素っ気なく「●●さんのおかげです」と言い表すよりも感謝の気持ちが伝わります。
イメージしやすい表現で共感つかむ
喜怒哀楽の感情を表現するとき、感じたままに「うれしい」「悔しい」「悲しい」「楽しい」と言うのも自然でよいとは思いますが、体のパーツを使った表現をすると、感情がより明確に伝わります。何だか難しそうに聞こえるかもしれませんが、大丈夫です。実は無意識に私たちは体のパーツを使った表現をしているのです。
たとえば「耳が痛い話です」「心をわしづかみにされました」「責任が両肩にのしかかる」「胸を締めつけられるような悲しみ」「こぶしが震えるような怒りを覚えた」「腑(ふ)に落ちました」「手に汗握る緊張感」「背筋が凍るような恐怖感」などです。これらは体のパーツを使った表現ですが、普段から使っているものもあるはずです。
「胸」だけでも「張り裂けそう」「えぐられるよう」「高鳴る」「鼓動が止まらない」などのバリエーションがあります。「手」ならば「手探りで歩くような」「手あたり次第」「手も足も出ない」「手いっぱい」というように、次々に思い浮かぶはずです。
感想や意見を求められたが、どう表現してよいか分からないというような場合は、体のパーツに助けてもらうのも一策です。イメージしやすい表現は共感を呼ぶものです。日ごろから意識してストックを増やしておきたいですね。
次回は、会話がかみ合わないと感じる人への処方箋です。お楽しみに!
※「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は12月6日の予定です。
