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苦労のなかで「恩返し」を意識

いとう「今から考えれば、まだ世間の何たるかを何も知らない若い身で、大きな傘(大手事務所)の下から外に出て、自分でやっていくなんて、無謀もいいところでした。でも、10年、20年と月日がたって、何とか生き続けた自分を俯瞰して、気がついたんです」

梶原「何に、ですか?」

いとう「もがき苦しんで、すべてをあきらめてしまおうかと思った、そんなときでさえ、直接存じ上げない方を含め、様々な人たちが救いの手を差し伸べてくださっていた。これ、決して、きれいごとで言うんじゃないんです。いつか、そういう多くの人、世間の方々に、恩返ししなきゃって思いが、どんどん強くなってきたんです」

梶原「恩返し? つまり、社会貢献ですか」

いとう「もっとシンプルに言えば、困っている人がいたら、その人のお役に立てる存在になりたい。どうしたら、そうなれるか? 私にそういう術(すべ)があるか、自問自答しました」

梶原「で、出てきた結論は?」

いとう「芸能界のことしか知らず、学もなく、無教養だった自分は、何から始めたらいいのか、皆目、見当がつかない。ひょっとしたら、大学というところに行って勉強すれば、世の中の役に立つことの土台が見つかるかも知れない! 単純にそう思いました」

予防医学に関心がわいて、早大へ

梶原「どの領域をどの大学でと、決めていたんですか?」

いとう「いいえ、全く。でも、たまたまそのころ、文部科学省と東京大学医科学研究所の中村祐輔先生たちが立ち上げた『オーダーメイド医療実現化プロジェクト』を紹介するビデオにナビゲート役として起用していただきました。台本を暗記して、そのまま役割を演じてもよかったんですが、生命科学とかゲノムとか、あまりに知らないことだらけで、なぜか必死に関係書を読みあさるうち、がぜん興味がわいてきました」

梶原「そういうもんですか」

いとう「台本にあるからではなく、本当に知りたいから、先生にどんどん質問をぶつける。先生も『こりゃ本気だな』と思ってくださったのか、丁寧に教えてくださる。そこから『予防医学』というキーワードに魅了されてしまいました」

梶原「医学部を目指すぞという感じに?」

いとう「さすがにそれは難しそうだと思って、いろいろ探した結果、『人間環境』『健康福祉』『人間情報』の3領域を横断して『予防医学』を学べそうな早稲田大学人間科学部eスクールにたどり着いたのが2010年のことでした」

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