有休義務化、何が変わる? 年5日は必ず消化へ
――違反した企業に罰則はあるのですか。
有休消化が5日未満の働き手がいた場合、最高30万円の罰金を企業に科します。罰金が違反1社当たりなのか、1件当たりなのかは明示されていません。もし違反1件当たりで罰金を科す場合、例えば従業員500人の有休消化義務を怠った企業の罰金は30万円×500人分で最高1億5千万円にも上ります。
日本の有休取得率はずっと50%前後で低迷しています。これまで企業は働き手の時季指定権を逆手に取り「社員が取得しない」と言い逃れができました。でも今後は通用しません。現在策定中のガイドラインでは企業に有休取得管理簿づくりを求める見通しです。取得状況などの情報を本人とその上司で共有し、確実に取得させる狙いです。各職場で社員が有休を消化できるように業務量を調整する必要もあるでしょう。サービス業のように土日も仕事がある業態は勤務ローテーションの組み方に工夫が求められます。
――取得義務化で参考になる先進事例はあるの?

IT(情報技術)ベンチャーのロックオン(大阪市)は土日を含む9日間の連続休暇の取得を義務付けています。翌年の予定を職場単位で調整して決めます。社員は思い思いに休暇を過ごし、リフレッシュしているそうです。ユニークなのは休暇中の連絡を一切禁止していること。そのため実際に山にこもるわけでないですが社内では「山ごもり休暇」と呼んでいます。
9日間も連絡を絶つには仕事を同僚に引き継がなくてはいけません。担当業務がどんな状況にあるか、懸案は何かなど仕事の棚卸しを休暇前に全員がします。このプロセスが無駄な業務に気付いたり、仕事の属人化を防いだりする効果も上げています。
有休が取りにくい職場風土は問題ですが、働く側も効率的に働く意識が必要です。会社と働く側の双方が業務の中身や進め方を見直さないと有休の取得は進みません。