介護人材不足、解消できる? 外国人活用は課題山積

初任者研修を受けるインドネシア人の介護技能実習生(長野県小諸市の介護施設協同組合)
介護の現場で働く人材の不足が深刻化していると聞いたけど、現状はどうなのかな。介護分野での外国人受け入れ拡大が検討されているようだけど、決め手になるのかな。
介護人材不足の現状や打開策について、海老沢亜希子さん(33)と阿部美香さん(54)が山口聡編集委員に聞いた。
――どれほど深刻になっているのですか。
介護保険制度がスタートした2000年度には介護が必要な高齢者は約218万人でした。これが16年度には622万人に増えています。介護職員数もこの16年間で約55万人から183万人と増えたのですが、まだまだ足りないのが実情です。18年8月時点で1人の求職者に対し何人分の求人があるのかを示す有効求人倍率は、介護分野では約4倍と全職業の1.5倍を大きく上回っています。東京都では約7倍など大都市圏で極端な人手不足となっています。
背景には介護職の待遇の悪さが指摘されています。厚生労働省によると、介護職員の平均月給は全産業平均に比べて10万円近く低くなっています。若い人が就職しても将来展望が開けないなどとして辞めてしまう例も目立ちます。
今後も人口の高齢化に伴い要介護者が増えていき、さらに多くの介護職が必要になります。政府は25年度には全国で今よりも約55万人多い介護人材が必要になると推計しています。これだけの人手をどうやって集めるのかが深刻な問題となっているのです。
――政府はどんな対策をとっているのですか。
まずは介護職員の処遇改善です。政府は09年度以降、数回にわたり介護職員の賃金を引き上げるために財源を手当てしてきました。さらに19年10月の消費増税による財源を使い一層の処遇改善を予定しており、勤続10年以上のベテラン介護士の月給を8万円引き上げられるとしています。しかし実現するためには様々な条件があり、政府が思う通りの賃金アップには必ずしもつながりそうにありません。
介護士を目指す学生への修学資金の貸し付けや幅広い人を対象にした研修の実施など人材の確保・育成策にも力を入れています。専門性を高め、それにつれて給料も上がるキャリアパスを描けるような支援も実施しています。このほか、現場の負担を減らすために介護ロボットを活用することや、ICT(情報通信技術)による作業の効率化、簡素化なども進めています。