東証、なぜ市場再編狙う? 「1部」が膨張、質向上へ

東証には全体で約3700社が上場している(日本橋兜町の東京証券取引所)
東京証券取引所が東証1部・2部といった市場区分の再編を検討していると聞いたけど、なぜ見直しの動きが出てきたのかな。実際にはどのような形で見直されるのかな。
東証が市場区分を見直す動きについて石川雅子さん(54)と中川あきよさん(39)が藤田和明編集委員に聞いた。
――そもそも東証にはどんな市場があるのですか。
東証には4つの市場があり、全体で約3700社が上場しています。市場ごとに上場企業数をみると、1部が約2100社もあり、2部の約500社、新興企業を中心とするジャスダックの約700社やマザーズの約300社を大きく上回っています。
東証1部上場といえば、超優良企業というイメージがありますよね。1部上場であることは大きなブランドで、日本のよりすぐりの企業が集まっているはずです。ところが上場企業数をみる限り、逆三角形になっているのです。
――なぜそうした状況になったのですか。
東証自らが1部上場のハードルを下げたことが指摘できます。かつては東証1部に直接上場するための時価総額要件は500億円でしたが、2012年に250億円に引き下げました。さらに2部やマザーズに上場した企業が内部昇格する道筋もあり、その場合には時価総額40億円で1部上場が可能なのです。
上場後に退出する企業が少ないという事情もあります。時価総額基準では10億円あれば上場を続けられます。その結果、東証1部に時価総額20兆円のトヨタ自動車と、20億円の企業が混在しています。
実は海外では上場企業数は減る傾向にあります。米国の上場企業数は1990年代に比べて半減しています。市場の評価を高めるためのM&A(合併・買収)が活発ですし、MBO(経営陣が参加する買収)で自ら上場をやめて経営改革をめざす例も少なくありません。
日本はこうした市場の規律がなかなか機能せず、株価が長期に低迷する企業でもそのまま残っています。