値段はAIが決める? ホテルや航空券、いつも最適価格

航空業界では早くからダイナミックプライシングが採用されてきた
「ダイナミックプライシング」という言葉をよく耳にするわ。需要動向などに応じて価格を変動させる仕組みで、最近はホテルや航空券以外にも広がっているそうよ。どうしてなのかな。ダイナミックプライシングの現状と今後について菅原直美さんと宇都木香織さんに石鍋仁美編集委員が解説した。
――ダイナミックプライシングとは何ですか。
ダイナミックは英語で「動的」、プライシングは「値付け」を意味します。価格や料金を頻繁に変えていく販売手法を指す言葉です。売れ行きや在庫、天候などの要因を織り込みながら、売り上げや利益を最大にし、かつ売れ残り品や空席、空室などを出さないよう、臨機応変に値付けしていくのです。
背景にはネット通販やビッグデータ分析、人工知能(AI)といったデジタル技術の進歩と普及があります。過去の購買行動やライバル店の提示している価格などのデータが手軽に閲覧、収集、蓄積できるようになり、AIも進化したため、予測の精度が上がったのです。
経営への利点だけではありません。柔軟な値下げで商品を赤字にならずに売り切ることができれば、食品ロスなどゴミの削減につながります。航空機の空席が減ればエネルギーを有効活用できます。逆に、混み具合に応じ道路の通行料や施設の入場料を上げて渋滞や混雑を緩和することも可能でしょう。社会的な期待も大きいのです。
――従来の割引セールとは何が違うのでしょう。
夕方ごろスーパーマーケットに行くと、総菜などに店員さんが値引きシールを貼っていますよね。航空機や鉄道、ホテルの料金は年末年始には値上がりします。価格競争の激しい家電量販店では、どの商品をいくらまで値下げしていいか、本部から店舗や店員さんにこっそり通知していました。季節商品の衣料品にはバーゲンがあります。
しかしこうした価格変更の多くは、事前に値幅を決めておくなど硬直的でした。慣習や経験、勘に頼る部分も大きかったようです。技術開発が進んでいるダイナミックプライシングでは、データを参照しつつ、その時々の状況も反映し、頻度や幅もきめ細かい点が従来の値下げや季節料金などとの違いといえます。