小惑星イトカワ着陸に成功 間際で「人力」制御を採用
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 元シニアフェロー 川口淳一郎氏(13)
はやぶさから届いた不可解なデータ
11月20日に1回目の着陸を試みた。
日本時間の19日午後9時ごろ、高度1キロメートルからイトカワに向けて降下を開始。リハーサルよりずっと精度よく誘導できました。徐々に高度を下げて20日午前5時40分に高度17メートルに達します。ここからは地球からの指令ではなく、はやぶさ自体が状況を把握して自律的に着陸、上昇します。
ここまでは順調に進んだのですが、この後、はやぶさから不可解なデータが送られてきました。着陸したはずなのに秒速2センチメートルで降下し続けているのです。イトカワに沈み込んでいるように見えますが、そんなはずはありません。
タイミングの悪いことに、ちょうどはやぶさと通信する地上局を米国から日本に切り替える時間と重なりました。切り替えの数分間ははやぶさからの信号を受けたり指令を送ったりすることができません。日本の地上局への切り替えが終わるとすぐに、緊急脱出の指令を送りました。
はやぶさは指令を受けてイトカワから離脱。データを解析してはやぶさはイトカワの表面で2回バウンドした後、約30分着陸していたことが分かりました。小惑星への着陸は米航空宇宙局(NASA)の探査機「ニア・シューメーカー」に先を越されましたが、着陸して再び離陸した探査機は世界で初めてです。はやぶさが着陸を認識していないためサンプルを採取する装置は働きませんでしたが、着陸成功にはメンバー全員が大喜びしました。
[日経産業新聞 2020年5月25日付]