「はやぶさ」を地球に戻せ エンジン故障で最大危機に
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 元シニアフェロー 川口淳一郎氏(18)

イオンエンジンの部品をつなぎ直して動かし、地球に帰還した(JAXA提供)
エンジンの故障をはじめ数多くのトラブルに見舞われながら、困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でプロジェクトマネージャを務めた、元シニアフェローの川口淳一郎氏は、小惑星からサンプルを持ちかえる世界初の試みを成功に導いた。川口氏の「仕事人秘録」の第18回では、「はやぶさ」を地球へ戻すために立ち向かった困難を語ります。
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予定から大幅に遅れ、次に地球に帰還するには07年4月にはイトカワを出発しなければなりません。採取したサンプルを地球に下ろすカプセルに無事に移し終え、2月にイオンエンジンの再点火試験も順調に終了。4月に出発しました。
ところが出発して数日後にイオンエンジンに故障が起きたのです。はやぶさに搭載したイオンエンジンは4基ですが、このうち1基は打ち上げ直後から不調。もう1基は行方不明後の再起動テストで動きませんでした。残る2基を使って出発したのですが、そのうち1基が停止したのです。
1基だけでは地球に戻るまで持つか心配です。再起動しなかったエンジンをなんとか動かそうと、エンジニアたちが手を尽くし、動かすことに成功しました。復活したエンジンを使って1回目の軌道変更は無事に終了。08年は太陽光の力だけで姿勢を維持したまま、イオンエンジンを使わずに太陽を回ります。
明けて09年2月のイオンエンジンを使った2回目の軌道変更も無事に終えようとしていました。地球まであとわずか、そう思えた矢先に最大のトラブルが待ち受けていたのです。