「はやぶさ」、長き旅を全う 再突入直前までトラブル
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 元シニアフェロー 川口淳一郎氏(19)

はやぶさからの電波が消え、7年間の運用が終わった(中央が川口氏)=JAXA提供
エンジンの故障をはじめ数多くのトラブルに見舞われながら、困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でプロジェクトマネージャを務めた、元シニアフェローの川口淳一郎氏は、小惑星からサンプルを持ちかえる世界初の試みを成功に導いた。川口氏の「仕事人秘録」の第19回では、大気圏再突入の舞台裏を明かします。
◇ ◇ ◇
はやぶさを地球に再突入する軌道に乗せ、イトカワのサンプルが入ったカプセルを切り離すのですが、簡単なことではありません。軌道が正確でないと地球をとりまく大気との摩擦で流れ星のように燃え尽きてしまったり、大気に跳ね返されて戻れなくなったりしてしまいます。チャンスは1回しかありません。
日本ははやぶさ以前にカプセルを地球に再突入させた経験がありません。はやぶさを打ち上げる前の2002年に実験しようとしたのですが、打ち上げた実験用カプセルがロケットから分離できずに失敗しています。はやぶさの再突入はぶっつけ本番だったのです。
カプセルが着陸するのはオーストラリア南部のウーメラ砂漠です。米スペースシャトルの緊急時の着陸予定地になっていましたが、使われたことはありません。宇宙からの帰還を受け入れるのは、はやぶさのカプセルが初めてです。許可証を発行する仕組みから作らねばならない状態でしたが、豪国防省などが好意的に対応してくれました。