話の長さと年収は「反比例」、成功者はどう話す?

仕事ができて、人望が厚い。いわゆる「成功者」「お金持ち」と目される方々にお会いしてきて、感じるのは「話が短い」ということです。
例外なく彼らの話は、明瞭で簡潔です。話の長さと年収は反比例している、といってもいいでしょう。
にわかに信じられないという方は、あなたの周囲にいらっしゃる、長年その道で活躍し続けている方を、思い浮かべてください。
ブームに乗り一時的に地位やお金を得た方ではなく、その業界の情勢が芳しくなくても変わっても、つねに輝き続ける。本物のお金持ちは、延々と自説を展開したり相手の「話したい心」に、水を差すことはしません。
故事成語や業界用語などを持ち出して、話を難解にもしません。誰もがわかる言葉で、短く話すものです。
一方、仕事ができない人は話を分かりやすく伝えるために、最適な言葉を選ぶ「ひと手間」を惜しんでいるといっていいでしょう。
何も考えずに「話したい」ことを「話したいだけ」伝えていれば、長くなり分かりにくい、薄っぺらな内容になる。言葉に重みがなくなり、評価を下げている。
「話が長い」という一点のために、「昇進」や「昇給」を妨げているとしたら、見逃せないですね。
不要な前置きで相手を困惑させていませんか?
話が長くなる原因の最たるものが
「話しベタですから、自己紹介は苦手でして……」
「あがり症なので、うまく話せないのですが……」
「こういう場は不慣れなものですから……」
「若輩者ではありますが……」と。
自己紹介や発言をする場で、不要な前置きから始めることです。これは前置きというよりも、余計なひと言。いかにも自信なさげ、仕方なく話すといった雰囲気も漂ってしまいます。
誰しも人の話を聞くのは、本来面倒なものです。話をするのが苦手、口下手だと思っている人でも、話を聞くのは退屈でしかありません。
そんな状況で、「話しベタですから」とか「あがり症なので」と聞かされたら、たちまち、話を聞く気がなくなります。
「こういう場は不慣れなものですから……」「若輩者ではありますが……」というのも、謙虚さからの発言のつもりでしょうが、わざとらしく聞こえる場合もあります。
さらに「えーと」「あの……」と、不要な前置きが続けば、我慢も限界に達します。「早く終わってほしい」「もう聞きたくない」と、なるでしょう。
「意味のない前置き」をしていては、仕事でもプライベートでも、出会いのチャンスをなくしかねません。
会議やプレゼンテーションでこんな言動をしていませんか?
また会議やプレゼンテーションの場などで「マイク」を渡されると「あっ、あっ」と儀式のようにマイクテストをしたり咳(せき)払いをしたり。
「私の声、通っていますか?」などと念を押す方もいますが、こうした言動から緊張している様子が、手にとるように分かります。
これは、謙虚さや素直さの表現なのでしょうか?
ある講演の冒頭で「話は下手ですが、最後までお付き合い下さい」と語った講師が、おりました。「話が下手ならば講師を引き受けなければいいのに」と、私は突っ込みたくなりました。
冗談のつもりで、話をしたのでしょうね。
ある団体の発足記念の祝辞で「私は祝辞を述べたくはなかったのですが、○○さんに懇願されて仕方なくこうして話すわけでして……」と語り始めた経営者がいました。
「仕方なく祝辞をするなんて、主催者にも聞いている私たちにも失礼ではないかしら?」と正直、感じました。
こうした場には、あなたも接しているのではありませんか? いずれにしても無理やり聞かされるような参加者は、たまったものではありません。
こうした発言は、「話しベタ」を自慢しているようにも受け取れます。「私のしゃべりはひどい」と感じていたとしても、絶対に口にしないことです。不要な前置きをやめるだけでも、あなたの印象は変わります。
自分の発言をチェックしてみよう
上司やお客様と距離を感じる。同僚から煙たがれている。自分が話を始めると、しらけた空気を感じる……。
そんな不安が少しでもあるのならば、「私の話は、長いのではないか?」。とくに、「不要な前置き」をしているかどうか、確認しましょう。
「前置き」はほとんどの場合がクセです。無意識で行っていますから、本人は気づきません。ですから友人に尋ねてみたり、自分の発言を録音してチェックしてみるのも、いいでしょう。
実は、私自身「ボイスレコーダー」に講演を録音したことで「不要な前置き」をしていることに気づきました。
それは講演会で司会を務める方が、
「本日は、お足元の悪いなか、ご参加頂きまして誠にありがとうございます……」と参加者に敬意を払い、講師である私のプロフィールを丁寧に紹介してくださったにもかかわらず、
「本日は、お足元の悪いなか、ご参加いただきましてありがとうございます。ただいまご紹介いただきました臼井由妃です。改めまして自己紹介をさせていただきますね……」
丁寧に越したことはありませんが、いただいた講演時間を有効かつ、皆様のお役にたつような濃い話をするには、重ねてのプロフィール紹介やご機嫌伺いは不要です。
この事実に気づいてから、自己紹介を見直しました。「フルネーム」を覚えていただくことに、絞りました。
たとえば
「臼杵の臼、井戸の井と書いて臼井。由妃は自由の由、妃はお妃の妃です。そういっても白井さんとか由紀さんとか、覚えてもらえないのが切ないです。臼井由妃、覚えていただけたらうれしいです」という調子です。
講演は特別な場かもしれませんが、会議や打ち合わせ等で進行役がその方のプロフィールをきちんと紹介してくださっているのに、発言する際に同様の紹介を繰り返す人は、多いものです。
「話の長さと年収は反比例する」
この事実を、先ずは心に留めてください。話が長ければ「稼げない」と意識すれば、自然としゃべりすぎはなくなります。
そして「不要な前置き」をしていないか、確認してみましょう。明解で簡潔な話をするあなたに、「チャンスの女神」も微笑みます。
次回は、「心地良い間でコミュニュケーションの達人になる」です。「間」を上手に操れば、出会う人みんなが、あなたのファンになります。お楽しみに!
[2016年4月12日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。